消費者問題

支払った代金を返還しない条項がある場合にも代金の返還を求めることができるか。

この記事を書いたのは:平田 伸男

 民法においては,お互いが定められた契約内容に拘束されることになります。

 したがって,支払った代金についてどのような理由があっても返還しないという条項がある場合,返還を求めることができないのが原則です。ではどのような場合にも,お金の返還を求めることができないのでしょうか。

 この点,医療法人とインプラントの施術を内容とする治療契約が締結され,患者都合による治療中断の場合に治療費の返還はしない旨の条項が設けられたが,インプラントの施術前に患者が死亡したことにより契約が終了し,患者の相続人が不返還条項は消費者契約法10条により無効であるとして,不当利得返還請求権に基づき支払済みの治療費の返還を求めた事案において,「本件不返還条項は民法1条2項の規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものであるといえ,消費者契約法10条後段の要件を満たすものというべきである。」として本不返還条項を無効としました(津地裁四日市支部令和2年8月31日判決 判時2477号76頁)。

 消費者契約法10項後段は「法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって,民法1条2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは,無効とする。」と規定しています。

 契約書に条項の記載があっても,消費者の権利を制限したり,義務を加重する条項については,消費者契約法10条により無効となる可能性があります。

 消費者問題でお困りの際は,旭合同法律事務所にご相談ください。


この記事を書いたのは:
平田 伸男