相続・遺言

法定後見を阻止する手法

この記事を書いたのは:川口 正広

私には、長女と次女がいましたが、長女は亡くなりその子供(姪)がいます。平成29年から、私はケアハウスで暮らしていましたが、姪は月1回以上面会に来てくれて親しくしていました。他方、次女は私に冷たく、疎遠となっていました。

私が姪と親しくしているのを怪しんだのか、次女が私について、家庭裁判所に対し、保佐開始の申立をしてきたのです。

私は家裁調査官に対して、保佐は必要ないと述べましたが、その後どうなってしまうのか不安であったので、弁護士さんに相談しました。すると、弁護士さんからは、私と姪との間で任意後見契約を締結することをアドバイスしてくださり、その弁護士さんのおかげで公証役場で任意後見契約を締結しました。

その後、裁判所は、次のように指摘して、保佐開始の申立を却下してくれたのです。

1)任意後見契約が締結されている場合、家庭裁判所は「本人の利益のために特に必要があるとき」(任意後見契約法10条1項)に限り、保佐などの法定後見開始の審判をすることができる。

2)本人の利益のため特に必要があるときとは、任意後見契約の内容が不当な場合、任意後見契約の受任者に不適格事由ある場合、契約そのものの有効性に疑念がある場合、本人が法定後見制度を選択する意思がある場合、など任意後見契約によることが本人保護に欠ける結果となる場合をいうと解される。

3)本件では、本人の利益のため特に必要があるという事情が認められないので、任意後見契約法10条1項により、保佐開始の審判をすることはできない。

相談した弁護士さんのアドバイスによって、次女による保佐開始の申立は却下してもらえました。

任意後見契約の本来の使い方ではありませんが、この契約の存在は法定後見を妨げる効果があります。

ただ、問題点も指摘されていて、任意後見契約の受任者が本人の財産を食い物にしている可能性がある場合(任意後見監督人の選任を申し立てない状態)、周囲の者が法定後見を申し立てることによって本人を保護するのを困難にするという側面もあるのです。

悩ましい問題です。任意後見契約を締結するときは本当に信頼できる人かどうか吟味して下さいね。

@高松高裁令和1年12月13日決定(判例時報第2478号70頁)参照


この記事を書いたのは:
川口 正広