メンタルを理由にした減額請求は難しい
この記事を書いたのは:川口 正広
私は、平成28年から妻子と別居となっていますが、毎月6万円の生活費(婚姻費用)を支払う旨の調停が成立していました。
しかし、子供と面会が出来ないことで精神的に疲弊し、メンタルクリニックを受診するようになり、抑うつ状態のため一般就労は困難であるとの診断を受けました。
平成30年には、13年間勤務していた会社を自己都合退職しました。 これにより、収入がほとんどなくなったので、平成31年、生活費(婚姻費用)の減額を求めて調停を申し立てました。
ただ、私は自分の将来に役立てようと思い、平成31年に第一種衛生管理者の免許を取得し、令和2年には通信制の大学に入学しました。
そうしたところ、大阪高等裁判所は、婚姻費用の減額を認めないとする決定をしました。理由としては、
1)抑うつとの診断書には、具体的な症状が記載されず、どの程度就労が制限され、どのような形態であれば就労可能か明らかでない。
2)退職後、免許を取得したり通信制大学に入学したりなど意欲的に取り組んでおり、就労困難であるほどの抑うつ状態とするのは不自然である
3)メンタルクリニックへの通院も不定期であり、服薬も不定期である。
4)退職は、自らの意思で退職している(自己都合退職)
そして、客観的に収入が減少していても、稼働能力があるとされてしまい引き続き従前とおりの婚姻費用の支払いを命じられました。
メンタルを理由とした収入減少に基づく婚姻費用の減額請求については、労災認定を受けた場合を除いて、裁判所は非常に慎重です。
減額が認められるためには、具体的な症状を押さえた詳細な診断書が不可欠であり、クリニックへの通院や服薬も定期的に行われている必要があります。
また、退職の形態も、まずはメンタルを理由として休職を願い出て、その後に退職という形を取るべきでしょう。
@大阪高裁令和2年2月20日決定(判時第2477号50頁)
この記事を書いたのは:
川口 正広