自衛官の若年退職者給付金が財産分与の対象となるのか?
この記事を書いたのは:平田 伸男
1 若年退職者給付金とは
自衛官は,民間企業や通常の公務員とは異なり,幹部自衛官でない限り,55歳前後で定年退職となります。
このように早期に定年退職することによる所得上の不利益を軽減するために,定年退職した自衛官に支給されるのが若年退職者給付金です(防衛省の職員の給与等に関する法律27条の2)。
2 若年退職者給付金が財産分与の対象となるか
退職金が賃金規定などに規定されていて,退職後に退職金が支払われる可能性が高い場合,退職金は賃金の後払い的な性格を有することから,他方の配偶者に財産形成上の貢献が認められるため,離婚に際して退職金は財産分与の対象となります。
それでは,若年退職者給付金は離婚に際して退職金と同様に財産分与の対象となるのでしょうか。
①別居後に定年退職する場合
原則として,定年退職しなければ若年退職者給付金を受け取ることができません。財産分与の基準時である別居時において,若年退職者給付金を受け取る確定的な権利を有していないこと,若年退職者給付金は賃金の後払い的な性格を有する退職金とは異なり,退職後の収入格差を補うために支給されるものであること,退職後の収入金額によっては受け取れない可能性があることからすると,退職金と異なり財産分与の対象とはならない可能性が高いと思われます。
②定年退職後に別居した場合
自衛隊を定年退職することにより,若年退職者給付金を受け取れる権利を有すること,また実際に受け取っていることなどから,退職者若年給付金が財産分与の対象となる可能性は①の場合に比べて高くなると思われます。
しかしながら,若年退職者給付金は2回支給されることとなっており,将来支給される若年退職者給付金について,退職後の収入格差の補填という趣旨を重視すると財産分与の対象とはならないと判断される可能性もあります。
この論点について明確に判示した裁判例等はなく,結論を予測することは簡単ではありませんが,実際に裁判になった場合には,若年退職者給付金の趣旨などを踏まえて財産分与を考慮する必要があります。
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平田 伸男