家族信託
民事信託(家族信託)における専門家責任
この記事を書いたのは:川口 正広
将来の判断能力の低下に備えて、自己所有ビルの将来の大規模修繕やそれに伴って必要となる銀行融資(信託内融資)を子供が行えるように、子供を受託者とする民事信託(家族信託)の公正証書を締結した事案がありました。
しかし、その後、信託口座の開設や信託内融資が困難な状況が判明したため、このような情報提供やリスクを説明しなかったとして、民事信託の公正証書の作成を依頼していた司法書士に対し、損害賠償請求を提訴した訴訟事件がありました。
裁判所は、司法書士は,報酬を得て民事信託の支援等の業務を受任するに先立ち,信義則に基づき,金融機関の信託内融資,信託口口座(狭義)等に関する対応状況等の情報収集,調査等を行った上で,その結果に関する情報を提供するとともに,信託契約を締結しても信託内融資及び信託口口座(狭義)の開設を受けられないというリスクが存することを説明すべき義務を負っていたというべきであるとし、
司法書士(専門家)に対する損害賠償を命じました。
民事信託は複雑な法的枠組みでありリスクが内包していることもありますから、民事信託の契約をするときには慎重に検討する必要があります。
@東京地裁令和3年9月17日判決(家庭の法と裁判35号134頁)
この記事を書いたのは:
川口 正広