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代理母により出生した子との親子関係はどうなるか

この記事を書いたのは:川口 正広

1 代理母出産の決断

とある夫婦は、平成19年に婚姻した夫婦であるが、妻が罹患した疾患の治療の結果、懐胎や出産ができない状況となった。

そこで、海外での代理母出産をあっせんする企業に依頼し、ウクライナ国において、夫婦間の体外受精でできた胚をウクライナ女性に移植し、平成31年に子供が出生した。

なお、夫はウクライナ女性の出産前に子供を胎児認知した。これにより、子供はウクライナ国籍と日本国籍を持つこととなった。

夫婦は、ウクライナ女性の出産後、子供を引き取り、日本に帰国して監護養育している。

ウクライナ法では、ある夫婦間で受精した胚を他の女性の体内に移植した場合、夫婦が子の両親であるとされている。

2 日本では出生届が出せない(特別養子縁組の申立て)

ただ、日本法では、出産した女性が子の母とされるため、日本において夫婦の妻は、自分の子として出生届を出すことはできない(最高裁平成19年3月23日判決参照)。

そこで、夫婦は、子供との特別養子縁組の成立を求めて家庭裁判所に審判を申し立てた。

家庭裁判所は、

1)子供は、夫婦の監護養育により順調に成長し、親子としての愛着関係が築かれている

2)代理母は、そもそも夫婦こそが子供の実親として、夫婦に監護養育されることを予定して懐胎出産しており、代理母が子供を監護することは著しく困難であるといえ、特別養子縁組の成立を認めることが子供の利益のために特に必要があるといえる

などと指摘して、特別養子縁組の成立を認めました。

@静岡家裁浜松支部令和2年1月14日決定(家庭の法と裁判第34号120頁)


この記事を書いたのは:
川口 正広