法律婚と内縁関係が重複する場合に、遺族厚生年金はどちらがもらえるのか?
この記事を書いたのは:久保田 湧
厚生年金保険法(以下「法」という)は、老齢基礎年金の受給権者が死亡した場合には、その者の「遺族」に遺族厚生年金を支給する旨規定しています(法58条1項4号)。
遺族厚生年金を受けることができる遺族
①死亡した受給権者の「配偶者」であって、②その者の死亡の当時その者によって生計を維持したものとする旨規定されています(法59条1項)。
法では、「配偶者」には、婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含むものとする旨規定されています(法3条2項)。
事実婚関係の認定要件
「生計維持関係等の認定基準及び認定の取扱いについて」(以下、「認定基準」という)では、「事実婚関係」における認定の要件として、事実婚関係にある者とは、いわゆる内縁関係にある者をいうものとされています(認定基準5⑴)。
内縁関係とは、「婚姻の届出を欠くが、社会通念上、夫婦としての共同生活と認められる事実関係をいい」、
「① 当事者間に、社会通念上、夫婦の共同生活と認められる事実関係を成立させようとする合意があること。」、
「② 当事者間に、社会通念上、夫婦の共同生活と認められる事実関係が存在すること。」
をいいます(認定基準5⑴)。
重畳的婚姻関係の場合
また、届出による婚姻関係にある者が重ねて他の者と内縁関係がある場合の取扱いについては、届出による婚姻関係を優先すべきことは当然であり、したがって、届出による婚姻関係がその実体を全く失ったものとなっているときに限り、内縁関係にある者を事実婚関係にあるとして認定するものとするとしています(認定基準6⑴)。
①「届出による婚姻関係がその実体を全く失ったものとなっているとき」には、
「ア 当事者が離婚の合意に基づいて夫婦としての共同生活を廃止していると認められるが戸籍上離婚の届出をしていないとき」、
「イ 一方の悪意の遺棄によって夫婦としての共同生活が行われていない場合であって、その状態が長期間(おおむね10年程度以上)継続し、当事者双方の生活関係がそのまま固定していると認められるとき」、
のいずれかに該当する場合等が該当するものとして取り扱うこととするとしている(認定基準6⑴①)。
また、②「夫婦としての共同生活の状態にない」と言い得るためには、
「ア 当事者が住居を異にすること」、
「イ 当事者間に経済的な依存関係が反復して存在していないこと」、
「ウ 当事者間の意思の疎通をあらわす音信又訪問等の事実が反復して存在していないこと」
の全ての要件に該当することを要するものとしています(認定基準6⑴②)。
さいごに
以上のことから、法律婚と内縁関係が重複する場合に、どちらが遺族厚生年金をできるかは、個別の事案ごとの具体的な事情によって異なります。
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この記事を書いたのは:
久保田 湧